革の色落ち・色移りの原因と予防法|革のお手入れ
革の魅力のひとつは、時間をかけて色が変化していくこと。しかし雨の日や蒸し暑い日には、急激な環境の変化で色が一気に落ちてしまうリスクもあります。革から服へ、服から革へ。色落ち・色移りを防ぐために、気をつけるべきポイントを学んでいきます。
革の色落ち・色移りの原因
革は染料や顔料を使って染色しています。これらが水濡れや摩擦によって落ちたり服に移ったりすることを「色落ち」「色移り」といいます。
色が落ちないように加工することもできますが、ありのままの色や風合いを生かし経年変化を楽しめる革に仕上げるために、あえて加工をおさえた製品もあります。
たとえばポルコロッソで使用しているベジタブルタンニンなめしの革も、革のナチュラルな美しさを引き立てるために最小限の加工で仕上げたものです。
色落ちを防止する方法
革の色落ちは完全には防止できない
革の色落ちを完全に防ぐことはできません。革の染色は低温でおこなうため、もともと色が定着しにくい上、革を柔らかくするために使用する加脂剤には革と染料の結合を弱める作用があるからです。低温染色も加脂も、革を上質に保つためには欠かせない工程です。
急激に色が落ちないようにメンテナンスを続けつつ、革全体の風合いが変わりゆくさまを楽しむ心持ちを大切にしながら革製品と向き合っていきましょう。
水濡れと摩擦に注意する
多くの革は水分に溶けやすい染料で染められています。上記の写真からもわかるように、水に濡れると色落ち・色移りのリスクが高まります。雨の日や気温・湿度が高く汗をかきやすい日には、なるべく革が濡れないように注意しながら持ち運びましょう。防水スプレーやメンテナンスオイルで防水ケアをほどこすことも対策のひとつです。
また、革が濡れたときは強くこすらないように注意してください。ふやけている分、銀面(=革の表面)に傷がつきやすく、染料が落ちやすい状態になっています。
表面の水気はタオルで押しあてるように拭きあげ、染みこんだ水気は鞄の中に新聞などを入れた上で時間をかけて丁寧に乾かしましょう。
色移りを防止する方法
革から服
夏場や梅雨のシーズンは、もっとも色移りに気をつけたい時期です。湿度が高いため革の色が落ちやすい上、汗が革に染みこんで蒸れるため、革と服の摩擦も起こりやすくなっています。
色落ち同様、水に濡れないように配慮するのはもちろんのこと、湿度の高い日に革製品を持ち歩く場合は、明るい色味(白系)の洋服は避け、ダークトーンでまとめることをおすすめします。服の色が濃ければ、万が一色が移って染みができても目立ちません。
服から革
革に色が移りやすいのは、テキスタイル(服の模様)が後染めされた洋服です。布を糸で織りあげてから生地の状態で色をつける方法で、プリントものの服はほとんどが後染めで仕上げられています。洗濯表示や注意事項を確認し、色落ちのおそれがある服は革と合わせないように心がけるとよいでしょう。
革や服に色移りした場合の対処法
革から服
色が移ったらなるべく早く洗濯しましょう。自宅での洗濯が可能なものであれば、熱めのお湯に浸して洗剤で洗ったり、漂白剤につけこんだりすれば色が目立たなくなることがあります。それでも汚れが落ちないときは、街のクリーニング屋に相談してください。
ただし、時間が経って色が染みこんでしまった部分や色が濃い部分はもとに戻すのが難しいため、洗ったあとも色が消えずに残ってしまうケースもあります。まずは色が移らないように予防することが大切です。
服から革
革は丸洗いできません。革を洗うためのソープ剤などが市販されていますが、初心者が革を丸洗いすると色むらや硬化のリスクが高いのでおすすめしていません。消しゴムや水拭きによる汚れ落としをおこなっても落ちない汚れについては、クリーニング専門店に相談してください。強くこするとかえって革を傷めてしまうため、自己流で無理やり色を落とそうとするのは控えましょう。焦らずに落ち着いて、革をやさしく扱ってください。
革と長くお付き合いしていると、さまざまなハプニングに遭遇します。色落ち・色移りもそのひとつといえるかもしれません。ちょっとしたメンテナンスや心遣いで急激な色落ちを防ぎつつ、革を上手に育てていきたいものです。万が一ハプニングが起こったら、自分だけで補修しようと無理をせず、プロに頼ってくださいね。
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