【なめし工程レポート】職人「タンナー」の熟練の技と仕事(なめし編)|革製品ができるまで
長い年月をかけて培われてきた技術を用い、なめしの職人「タンナー」たちが魂を込めて作り上げた革は、まさに知恵と技の結晶。動物の皮が製品として使用できる革になるまでには、数多くの過程があります。なめし専用の工場で、製革の作業工程と職人たちの仕事をのぞいてみましょう。前編では加工前の純粋な「ヌメ革」ができるまで、後編では加工や染色を追っていきます。
1. 腐らないように塩漬け保管
ある日の早朝。トラックに載せられて、牛革のもととなる原皮が工場に運ばれてきました。日本の革製品の原皮はほとんどが北米などから輸入されたもの。腐らないように塩漬けの状態で工場に運ばれ、倉庫で保管されます。
2. 水洗いで原皮をきれいに
塩漬けされた原皮はそのままでは加工できません。水洗いし、塩分や汚れを落としていきます。水洗いは水分を戻してあげる役割も果たしています。ドラムのなかでおよそ24時間かけてじっくりと洗い上げます。
3. 作業効率を高める「背割り」
加工しやすくするために、背骨に沿って皮を左右に分割します。大型の動物の皮は大きくて扱いづらいので、分割することで作業しやすくなります。
4. 石灰に漬けて少しずつ脱毛・脱脂
皮を石灰層に移し、原皮についている牛の毛や脂肪を除去すると同時に繊維をほぐします。いきなり濃度の濃い石灰水に浸してしまうと革への負担が大きくなるため、薄い石灰水から徐々に濃い石灰水にひたしていきます。
5. 脂肪と汚れを落とす「フレッシング」
脱毛を終えたら、さらに余分な脂肪や汚れを機械を使って削ぎ落としていきます。皮の種類によってはここで厚みを整えることもあります。フレッシング後にはもう一度皮を水洗いします。
6. タンニン層でなめして皮から革へ
いよいよなめし本番。草木などの植物由来のタンニンを皮に染み込ませ、皮を柔らかくしなやかにしていきます。
まずは皮を機械に丁寧に結びつけ、タンニン層へと運びます。タンニン層は濃度によってなんと160にも分かれており、薄い層から濃い層に皮を順々に移しながら、徐々にタンニンを皮になじませていきます。
この途方もなく果てしない工程を経て、ようやく皮が革へと変身を遂げるのです。革に向き合う方々の忍耐力が伺えます。
7. 脂を加えて革を柔らかく、艶やかに
タンニン層に長時間漬け置きしたら、再度水洗いをしてから機械で余分な水分を取り除きます(水絞り)。
水気を絞ったら、次は革の仕上がりにとって大切な「加脂」の作業。革をさらに柔らかくしなやかに、肌触りなめらかに、そして艶やかに仕上げていきます。
8. 革を伸ばして乾燥させたら、加工へ
セッターという機械で革を伸ばし、その後10日間ほど乾燥させます。
乾燥後にできあがった加工前の革が「ヌメ革」。ヌメ革の色には原皮そのものの色が影響しているため、革の色や風合いは一枚一枚異なります。この時点ですでに、世界でひとつだけの革なのです。
こうしてたくさんの過程を経てできあがった革は、職人の手によって加工・染色されます。各ブランドやメーカーの希望に沿った革に仕上げるために、職人たちは絶妙な塩梅で革を見極め、機械を調節し、薬品を調合しています。後編では革が出荷されるまでの職人たちの奮闘を追っていきましょう。
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