革の美しさをひきだす、匠の技。ヘリ漉き・コバ磨き・ネン引きの作業風景|革製品ができるまで
繊細で美しい革製品は、職人たちの多彩な技とこだわりが織りなす一点モノ。何十、何百もの知恵と技を集結させ、絶妙なバランスを保った鞄や小物をつくりあげています。革製品ができるまでに登場するいくつかの技を、ポルコロッソの革職人たちの作業風景とともにご紹介します。
ヘリ落とし
革の断面の角(=コバ)を専用道具を用いて丸める作業です。「表面の仕上がり」に影響します。
手でさわったときに角が立っていると痛いので、ヘリを落としてコバを丸め、滑らかな手触りに導きます。金属でたとえるなら、“バリ落とし”に近いかもしれません。
ヘリ漉き
革の裏側(床面)を漉いて厚みを変える作業。ヘリ漉きによって革に美しい曲線と立体感がうまれます。
「丸みを帯びさせたい」「革の重なりや厚みを均一にみせたい」など、用途や仕上がりのイメージに応じて漉き方を変えていきます。職人が長年の革との付き合いを通して培ってきた感覚とこだわりが、革の魅力を支えているのです。
コバ磨き(コバ塗り)
革の断面(=コバ)を磨き、美しく仕上げる作業。科学的につくった“フノリ”のような液体「CMC」をコバに塗り、綿布などを使って磨きあげていきます。
革をカットすると、断面は凸凹でざらざらしています。木の切れ端のように見えることから「木端(コバ)」と呼ばれるようになりました。そのままにしておくとコバがほつれたり割れたりしてしまうので、コバ磨きによって保護するとともになめらかに整えます。
粘り気のあるCMCを使ってコバを丁寧に磨くと、摩擦によって光沢が生まれ、艶やかで洗練された印象になります。液体の量や塗り方、磨き方を工夫してコバをきれいに固めていく地道な作業は、革製品の仕上がりを左右する大事な工程です。
ネン引き
「ネン」と呼ばれる金属の道具を使って、革製品のコバから一定間隔のところに直線の筋をつけていきます。革に陰影をつけて立体感を増すとともに、革の表情を引き締める効果があります。
硬いヘラを手で引く方法もあれば、熱を加えながらヘラを押し当てたり、ネン引きの線を型に組み込んで型押ししたりする方法も。熱を加える場合には、ヘリの接着性が高まり、コバが強くなるともいわれています。
美しい筋を入れるためには、熟練の技が必要です。力や熱の加減、道具の角度を調整しながら、正しい位置に、ちょうどよい太さと深さの線を入れていきます。
ポルコロッソでは、ミシンで縫製する場所にネン引きにをほどこし、その上をなぞるようにステッチを入れています。ネン引きによってステッチとコバの距離が均一になり、製品全体がバランスよくまとまります。
革職人たちは、一点一点、一つひとつの作業に心を込めて革と向き合っています。革の光沢、なめらかな手触り、細やかな縫製、丈夫なつくり……。すべては地道な手仕事の積み重ねによって成り立っているのです。革製品を手にした際には、たくさん見て触れて、細部のこだわりまで存分に堪能してくださいね。
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